ジョージ君の旅行鞄


私がわざわざ紹介せずとも東海林さだお先生のジョージ君シリーズは面白さ鉄板です。
いやあえてね、難癖つけようと思えばつけられないこともないんですよ。
例えばなぜジョージ君はいつもいじけているのか。
いつも必ずジョージ君はもてなくさえなく、せせこましく、そしてそんな自分をグヤジーと泣きむせぶんですけど、よく考えたら彼はいまや大御所なんじゃないか。その気になれば高級なお店でVIP待遇で会食することだってできるんじゃないの?
そんな疑念も頭に浮かばないこともないんだけど、一方でそんなジョージ君は見たくない、というあまのじゃく根性が読み手にはあるんですよね。
ええ、まったく読者ってやつは勝手な生き物なのです。

今回もひがんでいじけて、涙ぐむジョージ君節がてんこ盛りです。

焼肉屋の料理は、どの店もそれほど当たりはずれがなく、大いに満足しつつ食べていると
「本場の焼肉はこんなもんじゃないんだよな」と言い出す奴が必ず出てくる。
そうすると
「そう。アッチはこんなもんじゃないよな」ということになり、
「キムチもアッチはこんなもんじゃないよな」ということになり、
「キムチもこんなふうに日本人向けにしてしまってはおしまいだよな」ということになっていく。
ぼくはまだ一度も韓国に行ったことがない。だからこれらの発言に一言も反論することができない。それまで大いに満足しつつ、元気いっぱい食べていたのになんだか急にまがいものを食べているような気持ちになって(いいんだ。オレがいま食っているのはヘンな焼肉なんだ。どうせいいんだ。オレ田舎もんだし)と急に元気がなくなり、箸先にも力がこもらなくなって、焼肉をポトリと取り落としたりする。


んな大げさな。と突っ込みたくなるんだけど、これこそジョージ節の極みです。
この他「十年間掃除をしない山羊小屋の中で食事をしているような気持ちになる」ととある編集者からおどされた山羊汁に挑戦し、最初のうちこそその編集者を大げさな奴だと鼻で笑っているのですが、そのうち、「たしかにこれは、このォ、なんというか」と絶句し、件の編集者評が「物事の判断が正しいほう」と変わり、さらに「味覚も鋭く、いい人」と評価が変わっていく様子も爆笑必至です。ちなみに東海林氏の山羊汁評は、十年間掃除をしない山羊小屋を、密閉して蒸し器にかけ、五年ほど発酵させ、その封をいままさに切ったというような恐ろしい匂い、だそうです。

今日のBGM
星空を見上げて(reprise)LUV and SOUL
流れ星が落ちていく様子が目に浮かぶような短いピアノのインスト。



スポンサーサイト

テーマ : 本の紹介 - ジャンル : 本・雑誌

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する