アンドラーシュ・シフ リサイタル

最近クラッシックのコンサートにいってもどうも涙腺をしげきしたり
気持ちを高ぶらせたり、そんな気持ちになれず、消化不良のコンサートが
続いていたのですが、今日は久々のヒット、いやヒットという言葉では
語りきれないすばらしいコンサートでした。

ピアノってこんなにいろんな音がでてこんなにきれいな音が
出るものだったんだ、ということをベートーヴェンという
天才音楽家の手による奇跡の作品群と、このコンサートの
テーマである震災被災者への思いのこもったバッハのアリアとで
私たち観客の前に、珠玉のピアニストが、丁寧に示してくれた
そんなコンサートでした。

最初はベートーヴェンの6つのバガテル
まさに6つの小品次から次へ、息つくひまもなく繰り広げられる奇跡の音色群。

2曲目はピアノソナタ第32番ハ短調OP111
ピアノを聞きながら亡くなった私のピアノの師匠が
よく言っていた「ひびくピアニッシモ」「たたかない
フォルテ」とは究極これだろうな、という音。
もっと若いころに聞いてれば・・・。

休憩をはさんでディアベッリの主題による33の変奏曲
ハ長調OP120

これこそ音の玉手箱。絶え間なく繰り広げられる33の曲から
時に森の早朝、昼のなぎの海、人の死の瞬間・・・音楽を
聴いているだけなのに私の目の前にはいろんな風景が
消えてはあらわれ消えては現れしていきました。
「神の雫」という漫画でワインを主人公がのんでいくと
そこに絵画や景色がふわっと広がるシーンがあるんですけど
まさにそんな感じでピアノの音色が私の脳内からいろんな
シーンを思いうかばせている感じでした。音楽に心奪われた
瞬間はもちろん、今までにもたくさんありましたけど
こんな経験ははじめて。

アンコール第1曲は
J.S.バッハ
:ゴールドベルグ変奏曲からアリア

これはこの曲からベートーベンが変奏曲という発想を得た、という意味合いと
このコンサートがささげられた東北の被災者にむけての思いと両方が込められているそうで。

となんでそんなことがわかったかといえば、アンコール1曲目が終わった段階で
ピアニスト本人の口から説明があったから。
特に感動的であったのは、震災を経済や政治もおおいに人々を救うだろうが
本当に人を救うのは人の思いであるという彼の言葉。
こういう思いをもって丁寧に音楽に取り組むとこんな音が出るのね、と
胸がっぱいになりました。

さいごは

ベートーヴェン
:ピアノ・ソナタ第30番ホ長調op.109

音楽家の音楽にささげる思いを聞いた後に
これを聞いちゃったらもうだめです。涙がとまりませんでした。

弾き終わって1階客のほぼ大半がすばらしい音楽と彼の
真摯な思いに敬意を表してスタンディングオベーション。
19時にはじまったコンサートが終わったのは22時ちょっと前。
この熱演の後、長蛇の列をなす観客へのサイン会もおこなった
ようで(私は翌日仕事なので失礼しましたが)最後の観客のサインを
終えたのは深夜だったのではないかしら・・・。

最後にこのコンサートの売り上げはプログラムの売り上げにいたるまで
すべて東北に寄付されるそうです。思いと実行とが一致していることにも
感服です。しかも震災直後、ではなく震災から3年たった今、異国の人から
こういった形で支援をうけると、感謝という言葉だけでなく自分も
もっと社会のため、世の中のため、グローバルな視点でやれることを
見つけて尽力しなければいけないな、という振り返りのきっかけにもなりました。
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テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

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