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しんこ細工の猿や雉

しんこ細工の猿や雉

女学校を卒業し、会社勤めを経て、芥川賞作家となるまでの経緯や
思いのたけをつづった小説。

田辺さんの小説の魅力はなんといっても、普通の人の普通の感覚を平易な言葉で
書き表せること。この小説はそうした彼女の小説の魅力がどのような過程や
意識のもと醸し出されるにいたったのかを探るにぴったりな作品です。

バルザックやモーム、モロー、三島を読み、文学仲間の文学論から
自身の文学観を見つめ、試行錯誤しながら自身の作品に投影しつつ
大阪商売人の生のやりとりも面白がり、自身の中に蓄積する。
文学一本槍の人たちの、高尚だけどどこかはずれた感覚を敏感に
感じとりつつも、文学仲間の中にあっても普通の感覚を持った人たち
本質的な批評ができる人たちの存在にも気づき、その人たちの言葉を
大事にする。

こういう、鋭い人間観察の目と、蓄積されてきた文学観こそが
彼女の小説の魅力をつむぎだしたのだということがよくわかる
おそらくは田辺聖子氏を研究している研究者にとっては
かけがえのない1冊になるのでしょう。

・・・なんてことを書きましたが、私文学部出身でありながら
小説や作家を研究する意味ってあまり感じてないんですよね。
小説は単純に楽しみ、自身の視野を広げ、考えをふかめる道具に
すればいいだけで、研究したところで何が出てくるのさ、と
思うんですね。
その小説や作家からうける影響はおそらくはその読者一人ひとりが
歩んできた人生によっても違って当然なんですし。

なのでこの小説も、本当は単純に田辺氏のすばらしい筆致による
大阪人や著名・無名入り混じる文学仲間の会話や投稿作品の
世界にどっぷりひたるのが正解だと思います。

ちなみに作中に紹介されている、いまや連絡もとれない過去の
無名の文学仲間達の作品もこの小説の魅力。
昭和の混乱期を懸命に生きているその息吹が不器用ではあるが
ストレートな文体からずばっと伝わってきて、今まで味わった
ことのない衝撃を味わうことができます。

今日のBGM
セントエルモ
Appicat Spectra
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テーマ : 読んだ本の感想等 - ジャンル : 小説・文学

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