ちょいな人々

ちょいな人々

「ちょい」悪ならず「ちょいださ」な親父たちが、20台の小娘に「ちょちょいのちょい」としてやられる話から
星新一ばりの、近未来に起こりそうなシニカルなものまで、軽妙でにやりと笑わせられるけど
案外辛辣な短編集です。

もともとこの作家がコピーライターだったこともあり、雑誌内のキャッチや、企業内のプレゼン場面などなかなか
リアルで、そこもまた笑いを誘われます。

さらっと読めるけどただの「軽いだけ」の作品ではなくおすすめです

今日のBGM
レ・シルフィード~華麗なる大円舞曲(ショパン~ダグラス編)



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テーマ : 読んだ本の紹介 - ジャンル : 本・雑誌

売れる小説の書き方

売れる小説の書き方

エンジン01という日本文化のさらなる深まりと広がりを目的に参集したボランティア集団 が
主催したパネルディスカッションを本にしたものです。
ここに参加している著名人の名簿が後ろにあったのですが
日本文化の深まりというよりは、超高級フランス料理屋さんなんかに集まって
うっすいうんちくを語っていそうな輩もちらほら。

とはいえ、日本文化という言葉に引っ張られ、すごい仰々しいことを
してしまったら、日本中の誰もついていけないでしょうから、そういう意味では
ちょどよいハードル具合なのかもです。

そもそも売れる小説の書き方、なんてあるはずもない。
この本を手に取った人々も別にタイトル通りの内容を期待するはずも
なく、ある意味予想通り、タイトルにそぐわない、売れるまでは大変ですよ
という話が展開されています。
今時作家になって一発あててやろうなんて人そうそういないでしょ、と
思っていたのですが、意外といるのね、ということもわかりますし
世の中に小説を出していくための作家と編集者の葛藤ぶりもわかります。

中園さんが「私のようなふざけた作品を書いているようなものに言われたくはないだろうが」
といったような前置きを置いて、TVドラマが薄っぺらになっている様子を批判しています。
確かにおまえにいわれたかないよという気もしないではないですが
でも彼女がこの本で指摘している、TV業界の在り方についての疑問は
ものすごくまっとうで、今不振となっている地上波TV界の課題をずばりついています。

パネルディスカッションをまとめた「だけ」で格段加筆もないので
ボリュームも薄く、あっという間に読める本です。
また格段特別感あふれるエピソードが紹介されているわけでもありません。
が、4人とも世の中の記憶に残り続けるために、それなりのポリシーや哲学をもって
苦しんで粘って・・・少なくとも粘ろうともがいて、作品を出していることが
よくわかります。プロフェッショナルの世界において、苦労や苦悩が
ないはずもなく、まっとうで地味な努力があって成り立っている
というごく当たり前のことを、今一度ライトに振り返れるそんな本です。

ちなみにアマゾンで、この本相当酷評されてました。
私は図書館で借りたんで、お値段についての恨み節はいっさいないわけですが
お金払ってる人にはさらっと読めるこの軽さが逆に不満を生じさせてしまうかもですね。

今日のBGM
The Red Plains
Bruce Hornsby&The Range

真昼の悪魔

真昼の悪魔


ドラマ化されたことで複刊されたこちらの小説。
確かにおそろしいエピソードもてんこ盛りで、ドラマにはなかなかよさそうな素材です。
が、ぜひ小説で読んでほしい。
なぜなら小説で読まないと、エピソードがきつすぎて、著者の本来伝えたい「悪」の概念が
伝わりにくくなると思うからです。

遠藤さんが熱心なキリスト教信者であることは有名で、沈黙はじめ、彼のキリスト教の思想に基づく
思索がさまざまな小説に色濃く及んでいることは言わずもがな、です。
この小説に描かれている悪の概念もおそらくはキリスト教の教えにもよっているのでしょう。

私はキリスト教信者ではありませんが、キリスト教系の学校に通っていたので
一定の宗教教育は受けてきました。宗教教育は学校教育の一環でもあったので
道徳教育的なものを兼ねていた、という側面もあったからか
善行やほどこし、哀れみ、あるいは他人のために自分を犠牲にする精神などは
いやというほど習ってきましたが、悪とは何か、を考えることはあまりなかったような気がします。

ただ、悪を学校の授業で習うまでもなく、小さな悪はこどもながらもまわりにいくらでもありました。
そして成長し、自分の世界がどんどん広がっていくにつれ、悪はただの日常にあるちょっとした悪意
レベルではなく、残忍な犯罪となっていくこともあるのだ、ということを学んでいきました。
しかしながら、子供のころに実感していた悪も、大人になってから触れた悪も
ある意味どちらも実にわかりやすく、あくどいものでした。
でも悪か善かはっきりわかるような悪よりも、この本で作者が繰り返し
書いているように、一見美しく、またもしかしたら華々しい
ものの奥にある、隠れた悪、のほうが質は悪く、また屈折しているものなのかもしれません。
あるいはそのように隠れた悪の蓄積がいつしか大きな犯罪になっていくものなのかもしれません。
また今の世の中でさほど悪ととらえられていない事象も実はとてつもない悪行なのかもわかりません。

と考えていくと逆に
ちょっと踏み間違えれば人は残忍な方に流れていくことができる。
そこを踏みとどまり、懸命に生きてるからこそ美しいともいえるのかも、とも考え至ります。

極端なエピソードを面白がって読むのも悪くないですが
悪ってそもそも何なのか?普段なかなか考えないテーマを考えるきっかけになる1冊です

今日のBGM
Robert Randolph
The March


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神様の裏の顏

神様の裏の顔

心あたたまるエピソードの積み重ねから、じわじわ読者に違和感を覚えさせ、やっと核心に迫ったと思いきや、後半いなされる。

まあ、正直後半の展開はやややりすぎで、もうちょっとシンプルでもよかったんじゃないの?という気もしないではなかったですが、その過剰感をもってしても、面白かった、と心から思えるミステリーです。

もっと色々感想を書きたいのですが、感想を書くと思いきりネタバレしそうなのでこの辺で。
とにかくおすすめです。

今日のBGM
Do you believe in love?
Huey Lewis and the News

刑務所ワズ

刑務所わず

ご存知ホリエモンの刑務所体験記、です。
刑務所ナウ、も読んだのですが、ナウよりワズのほうが読みやすいし
私にとってはいろいろ学べる1冊でした。

刑務所に入るというのは
普通に考えたら相当に気持ちが落ちることのはず。
ましてや彼は自身で無罪を確信して戦ってきたわけですから
その落ち具合は相当なものだったのでは。

でもそこをただただ耐える、だけで終わらせずに、
経験をちゃんとアウトプットし、結果的に相当の売り上げに変えちゃう
とはさすがとしかいいようがありません。

ただ、おそらくこの記録についていえば
決して売り上げをあげることが「目的」ではなかったんだろうな、と思います。
結果的に売れた、だけであり、彼にとってはなんらかのアウトプットを
出すことを、生活の中に組み入れていくことが刑務所の中での生きがい
だったのではないかなと想像します。

とはいえ、刑務所でできること、も喜怒哀楽の幅も限られてはきます。
よって彼のそれまでの、また刑務所を出た後のいろいろなビジネス本に
比べると、淡々とした事実の積み重ね、つまりは
日々の食事、刑務所内の環境、当番の内容、他受刑者の状況、関係性
行事といった記録に相当のボリュームが割かれています。
しかしながらこうした記録に近いドキュメントを読んでいくだけでも、
日本における犯罪更生の課題がまざまざとわかってきます。

犯罪を繰り返す人の中にはもちろんいわゆる極悪非道な人も
いるのでしょうが(またそうした悪質な犯罪者がいることも、この本からはわかるわけですが)
本の中で堀江氏が繰り返しているように大半はごく普通の人たちで、
経済的な事情や本人たちのスキル、健康状態その他から「犯罪を繰り返さざるをえない」
状況に「なってしまう」ことが、本を読み進めていくうちにじわじわと、実感できてくるのも
この本の特性で、単なる獄中日記にとどまならいゆえんだと思います。

ということで、ホリエモンのことが嫌い、な人にもおすすめ、な一冊です。

今日のBGM
Try A Little Tenderness
Paul Giamatti & Arnold McCuller